大麻所持事件の捜査の現状ー「原則」20日の身体拘束
勾留総数 | 5日以内 | 10日以内 | 15日以内 | 20日以内 |
3,740 | 15 | 1,087 | 103 | 2,444 |
勾留総数 | 5日以内 | 10日以内 | 15日以内 | 20日以内 |
3,740 | 15 | 1,087 | 103 | 2,444 |
先日、千葉地方裁判所で無罪判決を得た。20代前半のカナダ人女性が友人に誘われて来日し、空港の税関検査で、持ってきた缶詰の中からコカインや大麻が見つかったという事件だった。起訴から判決まで1年4ヶ月を要した。本当に長かった。
無罪。そしてようやく釈放。本当ならそのまま一緒に裁判所を後にして、喜びたいところだ。しかし、被告人が外国人の場合、そう簡単にはいかない。その時点で在留期間を過ぎている場合には、出入国管理法違反(オーバーステイ)の疑いがあるとして、出入国在留管理局に連れて行かれてしまうからだ。彼女の場合は、観光目的の短期滞在の在留資格(90日)で来日していた。判決を言い渡された時、とっくに在留期間が過ぎていた。
こうした事態はしばしば起きる。当局が、裁判を受けることを目的として短期滞在の在留資格の場合の期間更新を原則として認めていないからだ(注1)。実際に私は、別の事件で、裁判を待っている依頼人の在留期間の更新を申請したが、否定されたことがある。
自分が希望して日本に滞在するわけではない。一方的に訴追され、勾留され、裁判を待っているだけなのに、在留期間の更新ができず、結局在留資格を失って退去強制されるというのは、おかしくないだろうか。
問題は、オーバーステイにより退去強制事由が認められてしまうことにとどまらない。このことは、保釈、そして無罪を主張する権利にも影響する。
どういうことかというと、裁判手続にはどうしても時間がかかる。否認事件の場合、90日で終わることはほとんどない。被告人が短期滞在の在留資格で滞在している外国人(例えば、ビジネス出張や旅行で来日した外国人)の場合、裁判を待っている間に在留期間が過ぎ、在留資格を失うことがほとんどだ。ところが、裁判所は、在留資格のない外国人にはほとんど保釈を許可しないという現実がある。そのため、外国人が無罪を主張し、裁判に時間を要するため、裁判が係属している間に近い将来在留資格を失うことが見込まれる場合、現実的には保釈は許可されないということになる。
保釈されずにずっと身体拘束され続けるならば、無罪を主張することを諦めて、有罪答弁して判決を甘んじて受けいれるーそういう考えに陥るのはごく自然なことだろう。自分の依頼人にも、そのように判断して争うことを諦めた人が何人もいる。これは、もう一つの人質司法というべき問題だと思う。
この問題を解消するための方法は、短期滞在による在留資格の更新を認め、あるいは、裁判を受けることを活動内容として、別の在留資格への変更を許可することだ。そうでなければ、出張のために来日したビジネスパーソンや、観光のためにやってきた旅行者が、何かの理由で逮捕勾留、起訴され、裁判を受けることになった場合、ほとんど保釈の可能性がなくなる。結果、無罪を主張することを諦めることになってしまう。そんな国に来たいと思うだろうか。
そして、裁判所においても、在留期間が過ぎるまでの間にできるだけ早くに裁判を終わらせる、迅速な裁判を実現するよう努めるべきだと思う。
1 判決宣告のテレビ撮影と配信 先日、刑事裁判の審理のインターネット配信をテーマに ブログ記事 を書いた。 これとは異なり、判決宣告の場面に限ってテレビ撮影し、オンライン配信やテレビ放映する制度を設けて運用する法域が存在する 。その背景には、オンラインによる審理の公開による問題(...